熱中症はどう治療するか?
自分の中では意外と丁寧に続いている熱中症シリーズ、前回は熱中症の診断と病態について書く中で、どのタイミングで病院に行くべきか?ということを解説しました。
今回は熱中症の治療について書いてみたいと思います!
熱中症の治療
熱中症の治療に関しては、特に重症熱中症では、まず冷却です。
これを表現する格言として、
“Cooling fast (first)!”
という表現があります。
早く、そして第一に冷やす!!鉄則です。
その中で、どうやって体を冷やすのが一番効果があるのか?を考えていきたいと思います。
体の冷やし方
体を冷やす方法として皆さんもよくご存じなのは、太い血管がある部位に冷えたものをあてて冷却するという方法なのではないでしょうか。太ももの付け根とか手首とか、首のあたりを冷やすというあれです。
実はこれ、特に重症熱中症に対しては、冷却効果はほとんどないそうです。やらないよりやったほうがましな程度だそうで。でも、やらないよりは絶対いいんですよ!実際涼しく感じますしね。やらないよりは絶対にいいんです、これだけは強調しておこうと思います。
さて、タイトルにも書いていた冷却シート〇えピタですが、熱中症に対しては論外の選択肢です。
理由は単純で、全くからだ全体を冷やすわけでもないうえ、むしろ発汗を阻害するからです。
はい、これだけです。すみません(笑)
あとは体を冷やす快適な文明の力としては、クーラーでしょうか。
クーラーは、予防にはいいですが、やっぱり治療には力不足なんです。もちろん、これもないよりはあったほうがいいですよ!!
それよりも効果的なのが、なんと扇風機です。古き良き文化のほうが効果的だったりすることもあるわけですね~
もちろん扇風機単独だけでは微妙なのですが、あるものと組み合わせると治療に有効になります。
それは…
微温湯。ぬるま湯です。
全身に微温湯を噴霧し、扇風機やうちわで送風し水を気化させると、そのときに熱を奪っていってくれるので体温を下げることができるんです。しっかりとこれにも名称があって、このような方法を「蒸散冷却」と呼びます。
氷水は?
でも、体を冷やすんやったら
冷水とか氷水のほうがええんちゃうん??
って思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、
冷たいものを体につけると、立毛筋が収縮し(鳥肌ですね)、また、冷却刺激でシバリング(震え)をおこしてしまい、むしろ体温が効率よく下がらないんです。
昔は気化熱が水より低いということでアルコールを使っていたそうなのですが、アルコールには最大の欠点として酔ってしまいますよね。大人でもさることながら、子供には絶対に使えません…
とはいえ、冷却するとなると、やっぱり氷水は最強です。氷水を使うときにもキチンとした名前がついていて、「冷水浸漬(cold water immersion)」と言います。
実際にやる方法としては、氷水にヒタヒタに浸かってもらうという極めて単純な方法です。
特に運動をしている際などになりやすい「労作性熱中症」における最も効果的な冷却方法として知られており、欧米のスポーツ界ではもはや常識となっているこちらの方法。
ただ、最強の氷水さん、冷却効果は抜群なので、むしろ冷やしすぎには注意が必要になってきます(過冷却に注意)。そのために、氷水に浸かっている間は、直腸体温をずっと確認(モニタリング)する必要があるわけです。
ちなみにですが、こちらの「冷水浸漬(cold water immersion)」、来年の東京オリンピックで選手が熱中症になった場合、世界陸連が使おうと検討している方法だと言われています。ただ、この際の直腸温のモニタリングは、日本では医療行為とみなされており、医師でなければ行ってはいけないという法律上の制限があり、実際に実用化されるかどうかについては少し不透明な部分があるようです…
その他には、脱水の対処として必要に応じて輸液や、その他の合併症への対処が必要になります。
また、最先端の治療方法として検討されているものとしては、膜型人工肺(ECMO)という、カッコいい器械を使った方法なども考案されているようです。まだ実験段階のようなので、こちらについては紹介程度にとどめますね。
おわりに
以上!熱中症の診断、重症度基準、治療についてザックリと紹介してきました。
単純そうだからこそ奥深い熱中症ですが、次回でこちらのシリーズも最終回とさせていただきます!!
最後に、熱中症の統計と、その意味合いについて解説したいと思います〜!
熱中症シリーズ
vol.1 熱中症の定義
vol.2 熱中症の体温の上がり方、なぜ解熱剤は無効なのか?
vol.3 熱中症の診断と病態
コメント