新型コロナウィルス感染症の陽性患者が東京で増加しているのが、連日ニュースで取り上げられています。
私は東京の人間ではないですが、東京のみならず大阪を始めとした全国で陽性者数が増加している兆しも見え始めました。
ただ、今回の陽性者数の増加に関しては、緊急事態宣言前と比較すると楽観的な観点を持ちがちなのではないかと思います。正直に言えば、私もはじめはそうでした。しかし、色々と詳しく考えていくと、そう簡単に現状の説明はできないのではないかと思い始めました。
今まで、新型コロナウィルス感染症については、あまりにも政治的なしがらみが強く、公に大きな声で何かを提言する、情報発信することを避けてきました。
今回の記事では、今回は私がどのように考えたのかを土台となった根拠について示しながらひとまず問題提起をしたいと思います。
予めお断りしておきますが、決して「陽性化率も増えとるやろ!」「都知事とか大臣は意図的に情報操作しとるやろ!」みたいな批判を加えたいわけではありません。せっかくこのサイトを訪れてこられる方には、ぜひともより幅広い観点から現状を考察していただけるように、1つのヒントをご提供できればいいなと思った上での投稿です。
楽観視の裏に想定される背景
まずこの緊急事態宣言の解除後にある程度楽観的な観点が広がった背景について考えます。
これについては、簡単に言えば、今回の増加についてはひとえに「PCR検査も実施数が伸びたことによって、それに伴い検査に引っかかる陽性患者数も増えた」という考え方です。
実際にPCRの実施検査数が増えていて、それにより多くの感染者を発見し、クラスタ対策ができていることを指摘できると思います。
「今まで」はどうだったのか?
しかし、物事を前後で比較するためには、PCR検査を増やす前にどのようにして感染者の特定ができていたのかを考慮する必要がもちろんあります。
では、PCR検査が拡充するまではどうやって陽性患者数を出していたのか。
これに関しては、今となってはニュースもワイドショーも取り上げなくなったため懐かしい話に思う方も多いかもしれませんが、検査が必要になるかもしれない人を絞り込むために、「受診相談窓口」が大きな役割を果たしていました。よく「コールセンター」と読んでいたやつです。
ここで絞り込まれた人たちが、実際の検査を受けるか受けないか、という判断がなされていたわけです。
結局今はどうなってるの?
現在は、この受信相談窓口による電話による相談者数に加え、比較的自由に実施できるようになったPCR検査が出てきました。医療機関などの独自の判断で実施できるPCR検査の枠数が増えてきているわけです。
ここで何がいいたいか。
今まで「陽性者の割合」を議論してきたのは、
「事前検査確率がわからない上に特異度が100%でない検査を実施しても仕方がない」という観点から、実際にどれだけ感染が広まっているかの指標として、「どれだけ実施した検査のうち、陽性の人がいるか」を考えれば感染の拡大の指標になるのではないか?
という観点からです。(ちょっと厳密には簡略化しすぎた部分もあり、こうやって言葉にしてみるとここにもたくさんツッコミを入れたい方はいらっしゃるかもしれませんが、とりあえずこの記事ではひとまず許してください(;^ω^))
もしも陽性率を比較するのであれば、今までの経緯を考えれば、母数は「検査数」ではなく、緊急事態宣言前は「コールセンターへの相談数」、ある程度PCR検査がコールセンターの判断なく実施できるようになった今は、「コールセンターへの相談数+検査数」を母数にしないと、陽性率は比較できないのではないか、という観点です。
これについて考えてみると、実は、受信相談窓口への問い合わせ件数の最大値と、現在のPCR検査数+相談窓口の対応件数は両方最大で約3000弱と、同じような値になってきます。
このような見方をすれば、今も前も母数はほとんど同じ、という議論もできてしまう、という点を指摘したかったわけです。
そう考えれば「PCR検査数が増えたからこの陽性患者数が増えたんだ!実際の陽性率は上がっていない!」と断定して言い切ることは難しいのではないかと思うわけです。実際に感染者数が増えていることも可能性としては否定できません。
とはいえ、逆に、以前よりも感染者数が増えているのかを現段階のデータで言い切れるかといえばそうではありません。4月の以前のタイミングでは感染している疑いがあった人が自ら電話で相談をしていました。しかし、現在は検査がさらに拡充してきたことで、比較的症状が軽い方でも検査をすれば陽性になると言うような状況も生じているかもしれまえん。すなわち、4月の段階では、(感染の有無には拘らず)感染してるとはゆめにも思っていなかった(感染者として想定されていなかった)ような人たちが、当時は検査対象の母数に含まれていなかったにもかかわらず、現在は検査をして陽性反応が出て、患者としてとして数えられていることも考えられます。
このように、検査基準が違うため、一概に東京都で感染者数が増えているのか減っているのかと言う判断が非常に難しいわけです。調べてみたところ、東京都もその問題を気づいているためか、その指標として公開しているデータの中には「#7119(健康相談窓口)の相談件数」などもありました。
ただ、そもそも#7119についてどこまで市民に周知されているかについては不透明ですし、これも盤石な指標と言い切るにはまた難しいかと思います。
現在の複雑性を示す指標として、1つ引っかかってくる指標があります。このように陽性患者数が増えているにも関わらず、今の段階では、重症患者数は今までの患者数の増加に反して統計上減っています。これが何を示すのか、色々な仮説が立てられるかと思うのですが、ひとまず現段階では、今までのデータを解釈する上で非常に難しくしています。
一人ひとりが論理的に判断しなければいけない
繰り返しますが、今回の記事で私が言いたかったのは、感染者数が増えていると言う事でもなければ、以前より減っていると言う事でもありません。
もしかすると、現在の感染状況としては、若年者層で感染が広がっているだけで、症状が出ずに今までは検査対象とならなかった人たちに検査を実施することで、検査に引っかかっている人が増えてしまっているのではないか?という可能性ももちろんあります。つまり、実際には感染フェーズが収まってきているという仮説を否定するだけの根拠に関してもまだ乏しいのではないかと思います。
ただ本当に感染者数が全体的に増加しているという可能性についても否定するだけの根拠も今のところは何もないのではないかということでもあります。
重傷者数に関しても、現段階では統計上増えていないだけで、今後増えてくる可能性もあります。また、今までの先生方が印象的な経験値を積んできたことにより、重症度判定の基準、集中的な治療が必要である基準が変動している可能性も否定はできないかと思います。このあたりについては、緊急事態宣言前の都の記者会見で国立国際医療研究センター病院の大曲先生がおっしゃっていたとおり、現在かなり主観的な部分も大きいと私自身は勝手に思っています。
くどいようですが、先程のデータについても、そして私の勝手な解釈についても、現時点では根拠はありません。
ただ、現状として「一市民として楽観的になるにはまだ根拠が薄いのではないか?」という問題提起はしておきたかった。
自粛解除ムードが漂うが…
というわけで、現在「Go toキャンペーン」など、色々と社会活動が復帰できるかのような空気が漂っていますが、そうは問屋がまだおろしている状況ではないと思っています。その可能性を否定しているわけではなく、単純に総短絡的に考える根拠に欠ける、と言いたいだけです。
なので、現在色々な感染モデルを考えておられる先生方がいらっしゃいますが、「なにが理論上正しいと判断できるモデルなのか」という点についてもう少し議論があってもいいと思うのです。1つのモデルだけで感染状態が示すことができるとは到底思いません。特に今後、外国からの人の往来がどんどん加速していけば、より多くの内容を加味していく必要があるでしょう。
ただ政府がこのような旅行支援を行っている以上、行動を制限するという判断は政府の検討案件としてあまり上位にはないのだろうと考えられます。
となってくると、1人1人が自らの感染、そして自らの大切な人たちの感染を防ぐためには、自分たちで身を守るしかない、ということです。
今、私達ができることは、自分や周りの人達を感染から守るための自衛を徹底すること。ただそれだけです。
ぜひ一方立ち止まって、今どのような行動基準を取るべきなのかご自身で判断していただきたいと思います。
あまり明るくない記事になってしまい恐縮ですが、非常に大事なことだと思ったので記事にさせていただきました。ここからはかなり私の主観が入りますが、もちろん私が正しいかどうかなど、今の段階では判断がしようがありません。ただ現段階では、自らの命、そして大切な人の命、それらを優先しても良いのではないか。そのようなことを優先する選択肢もかっこいいのではないかと私個人は思うわけです。繰り返しますが、これはあくまで私の主観です。
私だって旅行が好きです。Go toキャンペーンが発表され、私も早く旅に出たいです。そして、いつもこのブログを読んでくださっている方々がそう願っておられることも重々承知です。
だからこそ、1つ考えるきっかけを詰めて読者の方々には作っていただきたいと思い、初めてこのテーマについて筆を取りました。個人的には、今はとても大事な時期なのだと思っています。皆が笑いながら楽しく旅行に行けるような日々がいち早く訪れてくれるよう切に願っています。
※この記事はあくまで個人の見解であり、直するが所属する団体等の見解を示すものではありません。
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